根尖性歯周炎・歯根嚢胞とは|痛くなくても受診したい歯の根の先の病気(記事アイキャッチ)

根尖性歯周炎・歯根嚢胞とは|痛くなくても受診したい歯の根の先の病気

結論からお伝えすると、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)や歯根嚢胞(しこんのうほう)は、痛みがなくても進むことがある「歯の根の先の病気」です。「レントゲンで根の先に影があると言われた」「神経の治療をした歯が気になる」という方は、痛みが出るのを待たずに、歯科で状態を確かめていただくのが安心です。

一方で、「痛くないなら、急いで治療しなくてもいいのでは」「抜歯になるのが心配」と迷われるかもしれません。この記事では、まず確認していただきたい受診の目安を、いまの様子ごとに整理し、そのあと、痛くないのに見つかる理由や、歯科での治療の考え方をまとめました。

いなべ市のハギノ歯科でも、歯の根の先の病気についてのご相談をお受けしています。見た目や痛み方だけで原因を決めることはできませんので、この記事は自己診断ではなく、相談するタイミングを決める手がかりとしてお使いください。

まず確認|いまの様子で変わる受診の目安

歯の根の先の病気は、急に痛みが出る場合と、ほとんど症状がないまま進む場合があります。いまの様子にいちばん近いものを、下の表で確かめてみてください。

いまの様子考えられる状態受診の目安
痛みはない。ただ、神経の治療をした歯がある。または、しばらく歯科でレントゲンを撮っていない症状が出にくい慢性の状態のことがある痛みが出るのを待たずに、健診で確かめる
歯茎に小さなできもの(膿の出口)があり、膿が出ると楽になる根の先の膿が、歯茎に出口をつくっていることがある楽になっても、速やかに歯科へ
噛むと痛む・響く、歯が浮いたような感じがする、ズキズキ痛む炎症が強く出ていることがある速やかに歯科へ
顔まで広く腫れてきた。腫れとともに熱がある炎症が広がっていることがある速やかに受診を。顔や首まで腫れが広がる・口が開けにくい・飲み込みにくいときは、診療時間外でも相談を

表の「考えられる状態」は、1行目が日本大学松戸歯学部付属病院「歯はどうして痛くなる?」、2行目が福岡歯科大学医科歯科総合病院と日本大学松戸歯学部付属病院、3行目が日本歯科医師会「お口の119 歯がズキズキする」・日本歯科医師会「お口の119 かむと痛い 歯が浮く」と日本大学松戸歯学部付属病院、4行目が日本口腔外科学会「炎症」の解説をもとにしています。1行目の「いまの様子」と各行の「受診の目安」は、その内容に当院の考え方を加えて整理したものです。

日本歯科医師会は、歯がズキズキする場合、放っておくとひどくなるので早めに歯科医院で治療を受けるよう勧め、痛み止めの薬だけでは治らないとしています(日本歯科医師会「お口の119 歯がズキズキする」)。かむと痛い・歯が浮く場合も、放っておくとひどくなるので早めに治療を受けるよう勧めています(日本歯科医師会「お口の119 かむと痛い 歯が浮く」)。顔や首まで腫れが広がっている、口が開けにくい、飲み込みにくい、息苦しいといった場合は急を要します。あごの下やのどに感染が広がると、口が開かなくなったり、窒息の危険が生じたりすることがあるためです(札幌医科大学 口腔外科学講座「炎症・嚢胞」)。診療時間外でも、休日・夜間の診療窓口や救急相談窓口にご相談ください。息苦しさがあるときは、ためらわず救急車(119番)を呼んでください。

歯の根の先で起きていること|根尖性歯周炎と歯根嚢胞のしくみ

むし歯の細菌が、歯の中を通って根の先に広がります

歯の中には、神経や血管が通る「歯髄(しずい)」があります。むし歯が進んで歯髄に炎症が起き、治療せずにいると、やがて歯髄が死んで、痛みが止まることがあります。それでも歯の中には細菌がすみ続け、歯の根の先にある小さな穴(根尖孔)から、根のまわりの組織へ広がります。こうして起こる歯の根の病気が「根尖性歯周炎」です。炎症で骨の中に膿がたまると、レントゲンで根の先に黒い影として見えることがあります(日本歯科保存学会「歯科保存とは」)。

むし歯のほかに、歯をぶつけたけがが関係することもあります。日本口腔外科学会は、歯が少し抜けかかるようなけがでは、あとから歯の神経が死んでしまうことがあり、歯のけがでは治療後、何年もたってから歯根の先に病巣ができることもあるとしています(日本口腔外科学会「外傷」)。

健康な歯と、むし歯から歯の中の神経が死んで根の先の骨の中に病巣ができた歯を並べた、歯の断面のイメージ図
歯を縦に切ったところ。左:健康な歯。右:むし歯から歯の中の神経が死に、根の先の骨の中に炎症の病巣ができた状態。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。

慢性化すると「歯根嚢胞」になることがあります

日本口腔外科学会は、根尖性歯周炎が慢性化すると、歯根肉芽腫(しこんにくげしゅ)や歯根嚢胞ができると説明しています。嚢胞とは、体の中にできた袋状のもので、ふつうは中に液状のものが入っています。歯根嚢胞は日常の診療でよく見られるもので、あごの骨の中にできる嚢胞の50%以上を占めるとされています(日本口腔外科学会「嚢胞」)。

歯の根の先にできたこうした病巣は、まとめて「根尖病巣(こんせんびょうそう)」と呼ばれることもあります。歯科で「根の先に影がある」「根の先に膿がたまっている」と言われたときは、これらの状態を指していることがあります。

痛くないのに見つかるのはなぜ?自覚症状が出にくい理由

ゆっくり大きくなり、レントゲンで偶然見つかることが少なくありません

愛知学院大学歯学部附属病院の解説では、歯根嚢胞はゆっくりと大きくなるため痛みを感じないことが多く、レントゲン検査で見つかるのが一般的とされています(愛知学院大学歯学部附属病院)。東京女子医科大学 歯科口腔外科も、歯根嚢胞などのあごの骨の嚢胞は無症状のことが多く、歯科を受診したときのレントゲンで偶然見つかることも多いとしています。症状があるときは感染していることが多く、痛みや腫れを伴うこともあると説明しています(東京女子医科大学 歯科口腔外科「顎骨嚢胞・顎骨腫瘍」)。

根尖性歯周炎も、慢性の状態では軽い違和感があるか、症状がないとされています。レントゲンで見える根の先の影は、症状がなくても見られることが多いとも説明されています。ただし、急に悪化すると強い痛みが出ます(日本大学松戸歯学部付属病院「歯はどうして痛くなる?」)。歯の神経が死んで痛みが止まっても、歯の中には細菌が残ります(日本歯科保存学会「歯科保存とは」)。

こんな方は、一度歯科で確かめてみてください

当院では、次のような方に、痛みがなくても一度歯科で確かめていただくことをおすすめしています。

  • 神経の治療をした歯・神経を取った歯がある
  • 歯をぶつけたことがある
  • 歯の根にひびが入っている・割れていると言われた
  • しばらく歯科でレントゲンを撮っていない

神経の治療を終えた歯でも、細菌が残っていると、根の先で同じような炎症が起きることがあります(札幌医科大学 口腔外科学講座「炎症・嚢胞」)。歯のけがのあとは、何年もたってから根の先に病巣ができることもあります(日本口腔外科学会「外傷」)。歯の根のひびや割れを放っておくと、根尖性歯周炎などが起きるとされています(九州大学病院 歯内治療科)。

神経を取る治療をした歯がその後どうなるのかは、歯の神経を抜いた歯の変化と注意点でも解説しています。

よく似た症状との見分け方

歯の根の先の病気は、ほかの症状がきっかけで気づくこともあります。気になっている症状ごとに、考えられることと、次に読んでいただきたい記事を整理しました。

気になっている症状根の先の病気との関係次に読む記事
歯茎に白っぽい・ニキビのようなできものがある根の先の膿の出口(フィステル)のことがある歯茎の白いできものの正体と受診の目安
歯が浮いたような感じがする根の先の炎症で起こることがある。歯周病など、ほかの原因もある歯が浮く感じの正体と見分け方
治療した歯(銀歯など)が、しばらくしてから痛む被せ物や詰め物をした歯の根の先に、炎症が起きていることがある銀歯が痛むときの受診の目安
歯茎のあちこちが腫れる・血が出る歯周病など、歯茎全体の問題のことが多い歯茎の腫れの見分け方

根の先にたまった膿は、歯茎の下に移って破れ、膿の出口(瘻孔〔ろうこう〕・フィステル)をつくることがあります。瘻孔は、適切な根管治療を行うと多くの場合消えるとされています。ただし、通常の根管治療を行っても瘻孔が長く残る、治りにくい場合もあるとされています(福岡歯科大学医科歯科総合病院)。また、膿が骨の中からまわりのやわらかい組織へ移ると、圧が下がって痛みが軽くなることがあります。ただ、感染の原因は、通常は歯の中(根管)にあります(日本大学松戸歯学部付属病院)。そのため当院では、痛みが軽くなっても、治ったとは限らないとお伝えしています。

見た目や痛み方だけで、どれに当たるかを見分けることはできません。根の先の状態は、お口の中を見ただけでは分からず、レントゲンでの確認が必要です。迷ったときは、歯科でご相談ください。

歯科での治療|根管治療と手術(歯根端切除術)、ハギノ歯科に相談するとき

まずは、歯の中を消毒する根管治療から

根尖性歯周炎の治療では、原因になっている歯の中から、感染したものや細菌を取り除いて消毒する「感染根管治療」を行います。歯の根の中は細く複雑に曲がりくねっていることもあり、歯によっては治療がとても難しく、時間がかかることもあるとされています(日本歯科保存学会「歯科保存とは」)。細菌は一度の治療で大きく減らすことが難しいため、通院を重ねながら進めます(九州大学病院 歯内治療科)。

日本口腔外科学会は、歯根嚢胞は根管治療(歯の根の治療)で治ることもあると説明しています(日本口腔外科学会「嚢胞」)。一方で、嚢胞になると根の治療だけでは治らず、手術で取り除く必要があるとする解説もあります(札幌医科大学 口腔外科学講座「炎症・嚢胞」)。根管治療で経過をみるか手術を行うかは、レントゲンなどで状態を確かめたうえで判断します。

治りにくい場合は、手術で病巣を取り除くことがあります

根管治療で治らない場合や、根管治療ができない場合は、手術で嚢胞を取り除きます。日本口腔外科学会は、原因の歯がしっかりしていれば、根の先を切り取る「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」と一緒に嚢胞を取り除いて、歯を残す方法があると説明しています。原因の歯がぐらついている場合は、嚢胞を取り除くのと同時に、その歯を抜くこともあります(日本口腔外科学会「嚢胞」)。

歯根端切除術のあとは、根の先の病巣が治るまで経過をみます。骨はふつう、約6〜9か月で修復されるとされています(日本口腔外科学会「手術、手技に関して」)。嚢胞が大きい場合には、入院して全身麻酔で手術を行うこともあるとされています(慶應義塾大学病院「顎骨嚢胞」)。

ハギノ歯科に相談するとき

当院では、お口の中とレントゲンで、歯の根の先の状態を確認します。当院の口腔外科では、歯根嚢胞の摘出と歯根端切除も行っており、根の先の病巣だけを取り除くことで、抜歯を避けられる場合があります。ただし、歯の状態によっては、歯を残すことが難しい場合もあります。治療の方法は、お口の状態を確認したうえでご説明します。くわしくは、当院の口腔外科のご案内(歯根嚢胞摘出・歯根端切除)をご覧ください。

受診のときに伝えていただきたいこと

  • 気になる歯の場所と、いつごろからの症状か:痛み・腫れ・膿の出口など、気づいたこと
  • その歯の治療歴:神経の治療をしたことがあるか、治療を途中でやめていないか
  • ほかの歯科で「根の先に影がある」と言われたことがあれば、そのことと、服用中のお薬・持病・妊娠の有無

うまく説明できなくても大丈夫です。気づいたことを、そのままお伝えください。

早めに確かめたほうがよい理由

根尖性歯周炎は、はじめは歯の根の先のまわりにとどまる炎症ですが、進むと、あごの骨のより広い範囲に炎症が広がることがあります(日本口腔外科学会「炎症」)。東北大学病院 歯内療法科 科長による解説も、治療の時期が遅れると痛みと腫れが長引くとしています(東北大学「歯の根がしつこく痛んだら」)。

また、上あごの奥歯の根の先は、頬の奥にある空洞(上顎洞〔じょうがくどう〕)にとても近いため、根の病気から上顎洞に炎症が起き、片側の鼻づまりや鼻水、頬のあたりの痛みが出ることがあります(岡山大学病院「歯と口のトラブルマップ」)。

  • 痛みがない時期のほうが、治療方針を落ち着いて相談できます
  • 膿が出て楽になっても、原因が歯の中に残っていることがあります
  • 根の先の状態は、レントゲンで確かめます

「痛くないから大丈夫」と考えず、気になる歯があれば、定期健診のついでにでもご相談ください。

よくあるご質問

根尖性歯周炎や歯根嚢胞について、患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

痛みがなければ、治療しなくてもいいですか?

A

痛みがないことは、病気がないことを意味しません。愛知学院大学歯学部附属病院の解説では、歯根嚢胞はゆっくり大きくなるため痛みを感じないことが多く、レントゲン検査で見つかるのが一般的とされています(愛知学院大学歯学部附属病院)。日本大学松戸歯学部付属病院の解説でも、根尖性歯周炎は慢性の状態では症状がないことがあるとされています(日本大学松戸歯学部付属病院)。治療が必要かどうかは、お口の中とレントゲンで状態を確認したうえで判断します。

Q

根尖性歯周炎は、自然に治りますか?

A

膿が骨の中からまわりのやわらかい組織へ移ると、圧が下がって痛みが軽くなることがあります。ただ、日本大学松戸歯学部付属病院の解説では、感染の原因は通常は歯の中(根管)にあるとされ、治療ではまずその原因を取り除きます(日本大学松戸歯学部付属病院)。東京女子医科大学 歯科口腔外科の解説では、歯根嚢胞などのあごの骨の嚢胞は、自然に治ることはないとされています(東京女子医科大学 歯科口腔外科「顎骨嚢胞・顎骨腫瘍」)。痛みが軽くなっても治ったとは考えず、歯科で状態を確かめることをおすすめします。

Q

神経の治療をした歯でも、根の先に膿がたまることはありますか?

A

あります。札幌医科大学 口腔外科学講座の解説では、根の治療を終えたあとも細菌が残っている場合は、根の先で同じような炎症が起きることがあるとされています(札幌医科大学 口腔外科学講座「炎症・嚢胞」)。日本歯科医師会も、かむと痛い・歯が浮くといった症状の原因のひとつとして、すでに神経を取った歯のまわりに炎症が起きている場合を挙げています(日本歯科医師会「お口の119」)。慢性の根尖性歯周炎は症状がないこともあるため、神経の治療をした歯が気になるときは、痛みがなくても歯科で確かめてください。

Q

歯根嚢胞と言われたら、抜歯になりますか?

A

必ず抜歯になるわけではありません。日本口腔外科学会は、歯根嚢胞は根管治療で治ることもあり、治らない場合でも、原因の歯がしっかりしていれば、根の先を切り取る歯根端切除術と一緒に嚢胞を取り除いて歯を残す方法があると説明しています(日本口腔外科学会「嚢胞」)。原因の歯がぐらついている場合は、抜歯をすることもあります。お口の状態を確認したうえでご相談します。

Q

治療には、どのくらいの期間がかかりますか?

A

歯の状態によって異なるため、一概にはお伝えできません。九州大学病院 歯内治療科の解説では、根管治療は細菌を一度に大きく減らすことが難しいため、通院を重ねながら進めるとされています(九州大学病院 歯内治療科)。歯根端切除術を行った場合は、骨がふつう約6〜9か月で修復されるとされ、それまで経過をみます(日本口腔外科学会「手術、手技に関して」)。

Q

ほかの歯科で根の先に影があると言われました。相談できますか?

A

ご相談いただけます。お口の中とレントゲンで状態を確認し、治療が必要かどうかや、考えられる治療の方法をご説明します。言われた内容や、これまでの治療の経過が分かれば、受診の際にお伝えください。

いなべ市で、歯の根の先の病気が気になっている方へ。桑名市・東員町・四日市市など、近隣のみなさまからのご相談もお待ちしています。「痛くないけれど、気になる歯がある」というときこそ、まずはお気軽にご相談ください。

気になる歯、そのままにしていませんか?

お口の中とレントゲンで、歯の根の先の状態を確認します。
痛みがなくても、お電話またはWeb予約でお気軽にご相談ください。

まとめ:歯の根の先の病気は「痛みが出る前」の確認を

根尖性歯周炎は、むし歯などで歯の神経が死に、歯の根の先に炎症が起きて膿がたまる病気です。慢性化すると、歯根嚢胞ができることもあります。

痛みがないまま進むこともあり、とくに歯根嚢胞は、レントゲンで偶然見つかることも少なくありません。噛むと響く、歯が浮いた感じがする、ズキズキ痛む、歯茎や顔が腫れる、熱が出るといった変化があるときは、速やかに受診してください。

根尖性歯周炎の治療は根管治療が基本です。歯根嚢胞は根管治療で治ることもありますが、手術で取り除くこともあり、原因の歯がしっかりしていれば歯根端切除術で歯を残す方法もあります。この記事は自己診断のためのものではなく、診断は診察で行います。気になる歯があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。

萩野 貴俊

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

いなべ市大安町で約40年、地域の皆さまのお口の健康を見守ってまいりました。痛みのない歯の根の先の病気も、早めに確かめておくことが大切です。気になる歯があれば、お気軽にご相談ください。