歯茎が下がるのは様子を見ていい?歯肉退縮の見分け方と受診の目安(記事アイキャッチ)

歯茎が下がるのは様子を見ていい?歯肉退縮の見分け方と受診の目安

結論からお伝えすると、歯茎が下がる(歯肉退縮〔しにくたいしゅく〕)のは、歯周病が進んだサインのこともあれば、磨き方やかみ合わせ、年齢による変化のこともあります。日本歯周病学会は、まず歯茎が下がった理由を検査と診断で正確に調べることが大切だとしています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。

「歯が前より長く見える」「歯の根元が見えてきた」と気づいても、痛みがないと、様子を見てよいのか迷われると思います。この記事では、まず確認していただきたい受診の目安を、いまの様子ごとに整理し、そのあと、歯周病による下がり方とそれ以外の下がり方の違い、歯科での検査と治療、下がった歯茎は戻るのかをまとめました。

いなべ市のハギノ歯科でも、歯茎が下がってきたというご相談をお受けしています。見た目だけで理由を決めることはできませんので、この記事は自己診断ではなく、相談するタイミングを決める手がかりとしてお使いください。

まず確認|いまの様子で変わる受診の目安

歯茎が下がっているほかに、どんな変化があるかで、急ぎ具合が変わります。いまの様子にいちばん近いものを、下の表で確かめてみてください。

いまの様子考えられること受診の目安
歯が前より長く見える。根元が少し見えてきた。痛みや出血はない歯周病の進行、磨き方、かみ合わせ・歯並び、年齢による変化など、理由はいくつかある急ぐ必要はないが、一度歯科で理由を確かめる(定期健診のついででもよい)
歯茎が下がって、歯と歯の間にすき間ができてきた歯周病のセルフチェックの項目に挙げられている変化早めに歯科で検査を
歯磨きで血が出る、歯茎がときどき腫れる、朝起きると口の中がネバネバする歯茎に炎症が起きていることがある早めに歯科へ
歯がグラグラする、硬いものが噛みにくい歯を支える骨まで歯周病が進んでいることがある早めに歯科へ
下がったところが、冷たいものや歯ブラシでしみる歯の根の表面が出て、刺激が伝わりやすくなっていることがある歯科で相談を(しみ止めの処置ができることがある)

表の「考えられること」は、1行目が日本歯周病学会「歯周病の症状」、2〜4行目がe-ヘルスネット(厚生労働省)「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」とe-ヘルスネット「歯周病とは」、5行目が日本歯科医師会「知覚過敏」の解説をもとにしています。各行の「受診の目安」は、その内容に当院の考え方を加えて整理したものです。

e-ヘルスネットは、歯周病は初期の段階では自分で気づくような症状がなかなか出ないとし、気になる症状があれば歯科医療機関で検査を受ける必要があるとしています(e-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」)。痛みがないことは、確かめなくてよい理由にはなりません。

歯茎が下がるとは|歯の根元で起きていること

歯茎のふちが根の方へ下がり、歯が長く見えます

ふだん、歯の根は歯茎と骨に覆われていて見えません。歯茎のふちが根の方向へ下がると、それまで隠れていた歯の根元が見えてきて、歯が前より長く見えるようになります。これを「歯肉退縮」といいます。

歯の根の部分は、歯の頭のようにエナメル質で覆われていません。日本歯科医師会は、歯茎が下がって根が出ると象牙質(ぞうげしつ)がむき出しの状態になり、歯ブラシが触れたり、温度が変わったりする刺激で痛みを感じることがあると説明しています(日本歯科医師会「知覚過敏」)。

前歯を正面から見た図で、左は歯茎が歯の付け根を覆う健康な状態、右は歯茎が下がって歯の根元が見えている状態を並べたイメージ図
前歯を正面から見たところ。左:歯茎が歯の付け根を覆っている状態。右:歯茎が下がり、歯の根元(黄色みのある部分)が見えている状態。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。

下がる理由はひとつではありません

日本歯周病学会は、歯茎が下がる理由として、歯周病の進行、誤った歯磨きの方法、かみ合わせの悪さ(歯並び)などを挙げ、加齢によって下がることもあるとしています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。日本歯科医師会も、歯茎の位置は年齢とともに少しずつ下がり、健康な歯茎でもある程度下がるのは避けられないとしています。そのうえで、下がりやすくなるような不適切な歯磨きの方法をしないよう呼びかけています(日本歯科医師会「知覚過敏」)。

つまり、歯茎が下がっていても、それがすぐに歯周病だとは限りません。反対に、「年のせいだろう」と思っていたら歯周病が進んでいた、ということもあります。どの理由によるものかで、必要な対応が変わります。

歯周病で下がる場合と、それ以外で下がる場合

理由ごとに、あわせて見られやすいことを整理しました。ただし、見た目だけでは、どれに当たるかを決められません。いくつかの理由が重なっていることもあります。

考えられる理由あわせて見られやすいこと歯科で行うこと
歯周病の進行歯磨きのときの出血、歯茎の腫れ、口のネバネバ、歯と歯の間のすき間、歯のぐらつき歯周ポケットの検査やレントゲンで進み具合を調べ、歯周病の治療を行う
磨き方特定の歯の根元だけが下がっている歯茎を傷めにくい磨き方を一緒に確認する
かみ合わせ・歯並び力がかかりやすい歯や、並びから外れた歯で下がっているかみ合わせの調整や、歯並びの矯正治療を検討する
年齢による変化全体的にゆっくり下がっているほかの理由が隠れていないかを確かめ、しみる場合は処置を行う

表の「考えられる理由」と、磨き方・かみ合わせへの対応は日本歯周病学会「歯周病の症状」、歯周病で見られやすいことはe-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」、年齢による変化は日本歯科医師会「知覚過敏」の解説をもとにしています。「特定の歯だけ」「全体的にゆっくり」といった現れ方の傾向と、「歯周病の進行」「年齢による変化」の行の「歯科で行うこと」は、当院の考え方・対応として加えたものです。歯周病でも全体的に下がることがあるため、現れ方だけで理由を決めることはできません。

e-ヘルスネットは、歯周病が進むと歯を支える骨が溶け、歯がグラグラしてきたり、歯茎が下がってきたり、歯が抜けてしまったりすると説明しています(e-ヘルスネット「歯周病とは」)。歯周病のほかの症状が気になる方は、次の記事もあわせてご覧ください。

歯科での検査と治療|ハギノ歯科に相談するとき

まず「なぜ下がったか」を検査で確かめます

当院では、歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)の深さを測る検査や、レントゲンでの骨の状態の確認などを行い、歯周病が関係しているのか、ほかの理由によるものなのかを確かめます。日本歯周病学会によると、歯と歯茎のあいだの溝は、歯茎やその奥の組織に炎症が起こると深くなります(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。溝の深さを測ると、歯周病がどこまで進んでいるかの目安になります。

検査の内容や歯周病の治療の流れは、当院の歯周病治療のご案内(検査だけのご相談も可能です)で紹介しています。

理由に合わせた対応

歯周病が関係している場合は、歯周病の治療を行います。e-ヘルスネットによると、歯周病の治療には、歯磨きの指導、歯石を取る処置、かみ合わせの確認と調整などがあり、重い場合は歯茎の手術が必要になることもあります。治療が終わったあとも、歯周病は再発しやすいため、定期的な管理が大切とされています(e-ヘルスネット「歯周病の予防と治療」)。歯石は自分で取ることができないため、歯科医院で取ってもらう必要があります(同)。

磨き方やかみ合わせ・歯並びが関係している場合について、日本歯周病学会は、正しいお口の清掃方法に直すことや、かみ合わせの調整、歯並びの矯正治療が効果的だとしています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。

下がった歯茎は戻る?

日本歯周病学会は、歯周病の治療で歯茎が健康になれば、外科的な治療(歯周形成手術)によって、下がった歯茎を戻すことができる可能性もあるとしています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。e-ヘルスネットも、歯の根が出た部分を新しい歯茎で覆う手術があることを紹介しています(e-ヘルスネット「歯周病の予防と治療」)。

ただし、どの方にも手術が向いているわけではなく、歯茎や骨の状態によって、できることは変わります。当院では、まず歯周病などの理由を確かめて治療を進めます。歯茎を覆う手術が向いているかどうかは、検査の結果をもとにご説明し、より専門的な外科処置が必要な場合は、連携先の医療機関をご紹介します。

受診のときに伝えていただきたいこと

  • 気になる歯の場所と、いつごろ気づいたか:しみる・出血する・すき間ができたなど、気づいたこと
  • ふだんの歯磨き:使っている歯ブラシの硬さや、力の入れ方で気になること
  • 矯正治療の経験や、歯ぎしり・食いしばりの自覚があれば、そのことと、服用中のお薬・持病(糖尿病など)・喫煙の有無

うまく説明できなくても大丈夫です。気づいたことを、そのままお伝えください。

早めに確かめたほうがよい理由

歯周病は、初期には自覚症状が出にくい病気です(e-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」)。歯茎が下がってきたことが、歯周病に気づくきっかけになることもあります。進むと、歯を支える骨が溶けて、歯がグラグラしたり抜けたりすることがあります(e-ヘルスネット「歯周病とは」)。

また、e-ヘルスネットは、喫煙している方や糖尿病の方は歯周病になりやすい、または進みやすいことが知られているとしています(e-ヘルスネット「歯周病とは」)。当てはまる方は、とくに一度確かめておくと安心です。歯槽膿漏と歯周病の関係については、歯槽膿漏と歯周病の違いでも解説しています。

  • 理由によって、必要な対応が変わります
  • 歯周病は、痛みがないまま進むことがあります
  • 磨き方が理由なら、早く直すほど歯茎への負担を減らせます

「年齢のせいだから仕方ない」と決めてしまわず、気になる歯があれば、定期健診のついでにでもご相談ください。

よくあるご質問

歯茎が下がることについて、患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

歯茎が下がるのは、歯周病のサインですか?

A

歯周病のサインのこともありますが、それだけではありません。日本歯周病学会は、歯茎が下がる理由として、歯周病の進行、誤った歯磨きの方法、かみ合わせの悪さ(歯並び)などを挙げ、加齢によって下がることもあるとしています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。見た目だけでは決められないため、歯周ポケットの検査やレントゲンで理由を確かめることをおすすめします。

Q

下がった歯茎は、元に戻りますか?

A

状態によります。日本歯周病学会は、歯周病の治療で歯茎が健康になれば、外科的な治療(歯周形成手術)によって下がった歯茎を戻すことができる可能性もあるとしています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。e-ヘルスネットも、歯の根が出た部分を新しい歯茎で覆う手術を紹介しています(e-ヘルスネット「歯周病の予防と治療」)。ただし、どの方にも手術が向いているわけではありません。まず下がった理由を確かめ、治療の進め方をご相談します。

Q

20代でも、歯茎が下がることはありますか?

A

あります。日本歯周病学会が挙げる歯茎が下がる理由には、加齢だけでなく、誤った歯磨きの方法やかみ合わせの悪さ(歯並び)、歯周病の進行も含まれています(日本歯周病学会「歯周病の症状」)。年齢が若いから心配ないとは言い切れません。気になるときは、一度歯科で理由を確かめてください。

Q

歯石を取ったら、歯茎が下がったように見えます。大丈夫ですか?

A

日本歯周病学会は、歯石を取ったあとに歯茎が下がるのは、歯と歯のあいだを塞いでいた歯石を取り除いたことや、炎症がおさまって歯茎の腫れがひいたことが理由で、治療の効果が出てきている状態だと説明しています。すき間に食べ物がはさまりやすくなることがあるため、歯ブラシや歯間ブラシで取り除くことが大切です。歯石を取ったあとにしみる症状も、通常は一時的で、正しい歯磨きを続けると徐々に改善するとされています(数か月かかる場合もあります)(日本歯周病学会「歯周病の治療」)。気になるときは、治療を受けた歯科でご相談ください。

Q

歯茎が下がったところがしみます。どうしたらいいですか?

A

日本歯科医師会は、歯茎が下がって歯の根が出ると、象牙質がむき出しになり、歯ブラシや温度の変化などの刺激で痛みを感じることがあると説明しています。歯科医院では、しみる部分に材料を塗って刺激を伝わりにくくする方法があります(日本歯科医師会「知覚過敏」)。しみる理由がむし歯など別の原因のこともあるため、歯科で確かめてください。

Q

痛みはないのですが、検査だけでも受けられますか?

A

検査だけのご相談もお受けしています。e-ヘルスネットは、歯周病は初期の段階では自分で気づく症状が出にくく、気になる症状があれば歯科医療機関で検査を受ける必要があるとしています(e-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」)。当院では、歯周ポケットの深さの測定やレントゲンで状態を確認し、結果をご説明します。治療を進めるかどうかは、説明を聞いてからお決めいただけます。

いなべ市で、歯茎が下がってきたことが気になっている方へ。桑名市・東員町・四日市市など、近隣のみなさまからのご相談もお待ちしています。「痛くないけれど、前より歯が長く見える」というときこそ、まずはお気軽にご相談ください。

歯茎が下がってきた理由、確かめてみませんか?

歯周ポケットの検査やレントゲンで、歯茎と歯を支える骨の状態を確認します。
検査だけのご相談も、お電話またはWeb予約でお気軽にどうぞ。

まとめ:歯茎が下がったら、まず理由を確かめましょう

歯茎が下がる(歯肉退縮)のは、歯周病の進行、磨き方、かみ合わせ・歯並び、年齢による変化など、いくつかの理由で起こります。見た目だけでは、どれに当たるかを決められません。

痛みがなくても、歯周病が進んでいることがあります。歯磨きで血が出る、歯と歯の間にすき間ができてきた、歯がグラグラするといった変化があるときは、早めに受診してください。下がったところがしみる場合も、歯科で処置ができることがあります。

下がった歯茎は、歯周病の治療で歯茎が健康になったあと、手術で戻せる可能性もありますが、状態によります。この記事は自己診断のためのものではなく、診断は診察で行います。気になることがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。

萩野 貴俊

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

いなべ市大安町で約40年、地域の皆さまのお口の健康を見守ってまいりました。歯茎が下がってきたときは、理由によって対応が変わります。気になる歯があれば、お気軽にご相談ください。