詰め物・被せ物が取れたときの対処法と放置するリスク(記事アイキャッチ)

詰め物・被せ物が取れたときの対処法と放置するリスク|自分で戻してはいけない理由

詰め物や被せ物が取れたときは、①取れたものを捨てずに保管する ②自分で元に戻したり接着剤で付けたりしない ③その歯で噛まない ④数日以内に歯科医院を受診する——この4つが基本です。 取れたまま放置すると、露出した内部から虫歯が急速に進み、再装着では済まなくなることがあります。

「食事中に銀歯がポロッと取れた。捨ててしまってよいのだろうか」
「痛くないから、しばらくこのままでも大丈夫だと思っていた」
「治療中の仮歯が取れてしまった。次の予約まで待っていいのか分からない」

詰め物や被せ物が外れることは、決して珍しいことではありません。詰め物は歯科用のセメントで接着していますが、噛む力や時間の経過、内部の虫歯の進行などによって、少しずつ接着が弱まっていきます。

問題は、取れた歯は「削られた状態のまま」露出しているということです。人工物で守られていた部分がむき出しになり、細菌が入りやすく、また噛む力にも耐えられない構造になっています。

この記事では、詰め物・被せ物が取れたときにまず何をすべきかどのくらい急いで受診すべきかを整理してご説明します。すぐに歯科医院へ行けないときの過ごし方や、治療中の仮歯が取れた場合の対応もあわせて解説します。

詰め物が取れたときの応急処置4ステップ

取れた直後は、次の順番で対応してください。慌てて自分で戻そうとしないことが最も大切です。

  1. 飲み込んでいないか確認する:食事中に外れた場合、気づかずに飲み込んでいることがあります。詰め物は小さく、多くは自然に排出されますが、のどに違和感がある・むせるといった症状があるときは医療機関にご相談ください。
  2. 取れたものを捨てずに保管する:状態がよければ、そのまま再装着できる場合があります。水で軽く汚れを流し、乾いた清潔な容器やティッシュに包んで保管してください。詰め物・被せ物は乾燥しても問題ありません(欠けた歯そのものとは扱いが異なります)。
  3. その歯で噛まないようにする:削られた歯は薄くもろくなっています。噛む力が直接かかると、歯そのものが欠けたり割れたりするおそれがあります。反対側で食事をしてください。
  4. できるだけ早く歯科医院に連絡する:痛みがなくても、数日以内の受診をおすすめします。取れたものをお持ちいただくと、再装着できるかどうかを判断できます。

なお、取れた面がざらざらして舌に当たる冷たいものがしみるといった症状はよく起こります。これは内部の象牙質(エナメル質の内側にあるやわらかい層)が露出しているためで、多くの場合は治療で改善します。

やってはいけない4つのNG行為

  • 自分で元の位置に戻す:詰め物の裏側には、目に見えない汚れや細菌が付いています。そのまま戻すと細菌を歯の中に閉じ込めることになり、内部で虫歯が進みます。また、わずかでもずれた状態で入ると噛み合わせが狂い、歯や顎に負担がかかります。
  • 市販の接着剤で付ける:瞬間接着剤などは口の中での使用を想定しておらず、歯や歯ぐきを傷めます。さらに固まった接着剤を取り除く作業が加わるため、本来必要のなかった歯の切削が必要になることもあります。
  • 取れたまま長期間放置する:「痛くないから」と放置している間に、露出した部分から虫歯が進行します。数ヶ月放置すると、再装着ではなく作り直しや神経の治療が必要になることがあります。
  • 穴を舌や爪でいじる:気になって触ってしまいがちですが、細菌が入りやすくなり、歯ぐきを傷つける原因にもなります。

詰め物と被せ物の違い

「詰め物」と「被せ物」は混同されやすいのですが、歯の削られている量が大きく異なり、取れたときの緊急度も変わります。

種類どんなもの取れたときの状態緊急度
詰め物(インレー)虫歯を削った部分だけを埋める部分的な修復物歯の一部に穴が開いた状態。まわりの歯質は残っている数日以内に受診
被せ物(クラウン)歯全体を覆うかぶせもの。歯を大きく削っている細く削られた歯の土台がむき出しになる。欠けやすいできるだけ早く受診
仮歯・仮詰め治療途中に一時的に入れているもの治療中の歯が露出。歯が動いてしまうことがある早めに歯科医院へ連絡
詰め物(インレー)が入った歯の断面のイメージ図
詰め物(インレー)は、削った部分だけを埋める部分的な修復物です。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。
被せ物(クラウン)が入った歯の断面のイメージ図
被せ物(クラウン)は歯全体を覆います。土台となる歯は大きく削られています。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。

被せ物が取れた場合、残っている歯の土台は細く削られているため、そのまま噛み続けると歯そのものが欠けたり割れたりするおそれがあります。とくに神経を取ってある歯はもろいため、注意が必要です。

銀歯・白い詰め物など素材による違い

  • 銀歯(金属の詰め物・被せ物):変形していなければ再装着できる可能性が比較的高い素材です。ただし取れた原因が内部の虫歯である場合は、作り直しになります。
  • 白い詰め物(コンポジットレジン):歯に直接盛り付けて固める材料のため、欠けて取れた場合は再装着できず、あらためて詰め直します。
  • セラミックなどの白い被せ物:割れずに外れた場合は再装着できることがあります。破片が複数に割れている場合は作り直しの検討が必要です。

いずれの素材でも、取れたものはお持ちください。再装着できるかどうかは、外れたものと歯の状態の両方を見て判断します。ご自身で「これはもう使えない」と判断して捨ててしまう必要はありません。

取れたまま放置するとどうなる?

「痛くないから大丈夫」と考えて放置してしまう方は多いのですが、詰め物が取れた歯は、守られていた部分が露出した無防備な状態です。

詰め物が取れて穴が開いた歯の断面のイメージ図
詰め物が外れた歯は、内部のやわらかい層が露出した状態になります。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。
放置期間起こりやすい変化必要になりやすい治療
数日〜1週間しみる。食べかすが詰まる。舌に当たって気になる清掃のうえ再装着で済むことが多い
1ヶ月ほど露出面から虫歯が進む。隣の歯や噛み合う歯が動いて、元の詰め物が合わなくなる作り直し(型取りが必要)
数ヶ月以上虫歯が神経に達する。歯が大きく崩れる。歯ぐきが腫れる根管治療、または抜歯に至ることもある

とくに見落とされやすいのが、歯が動いてしまうことです。歯は常にわずかに動いており、詰め物がない隙間に向かって隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びてきたりします。こうなると、取れたものをそのまま戻すことができなくなります。

また、詰め物の下で進む虫歯(二次虫歯)は外から見えにくく、痛みが出たときにはかなり進行していることがあります。虫歯を放置した場合に何が起こるかは、虫歯を放置するとどうなるかもあわせてご覧ください。

すぐに歯医者に行けないときの過ごし方

夜間・休日・出張先などで、すぐに受診できないこともあります。受診までの間は次の点にご注意ください。

  • その歯で噛まない:反対側で食事をしてください。硬いもの、粘着性のあるもの(キャラメル、ガムなど)は避けます。
  • 穴の中も丁寧に清掃する:食べかすが残ると虫歯が進みます。やわらかい歯ブラシで優しく磨き、うがいで流してください。「触らないほうがよい」と考えて磨かずにいるのは逆効果です。
  • しみる場合はぬるま湯を使う:冷たい水や熱い飲み物は刺激になります。人肌程度の温度が負担になりにくいです。
  • 市販の歯科用仮封材について:薬局で入手できる一時的な充填材を、製品の説明書に従って使う方法があります。あくまで受診までのつなぎであり、治療の代わりにはなりません。使用した場合は受診時に必ずお伝えください。
  • 早急な相談を検討すべき場合:強い痛みが続く、歯ぐきや顔が腫れている、被せ物の土台がぐらついている——このような場合は、休日夜間の歯科診療窓口などへの相談をご検討ください。

治療中の仮歯・仮詰めが取れた場合

治療の途中で入れている仮歯や仮詰めは、あとで外すことを前提に、弱い力で付けてあります。そのため取れやすいのですが、「仮のものだから放っておいてよい」わけではありません。

仮歯・仮詰めが果たしている役割

  • 削った歯を保護する:むき出しの歯質を刺激や細菌から守っています。
  • 歯の位置を保つ:仮歯がないと隣の歯や噛み合う歯が動き、完成した被せ物が入らなくなることがあります。
  • 根管治療中の細菌侵入を防ぐ:神経の治療中に仮詰めが取れると、根の内部に細菌が入り、治療がやり直しになることがあります。

仮歯・仮詰めが取れた場合は、次の予約を待たずに歯科医院へご連絡ください。とくに根管治療中の仮詰めが外れた場合は、できるだけ早い対応が望まれます。当院でも、治療中の患者様からのこうしたご連絡には優先的に対応しています。

「またすぐ取れた」のはなぜ?

治療してすぐ、あるいは短期間で繰り返し取れる場合には、次のような背景が考えられます。

  • 歯ぎしり・食いしばり:就寝中に強い力が繰り返しかかると、接着が破壊されます。同じ箇所が何度も取れる場合、この可能性は高くなります。詳しくは歯ぎしり・食いしばりの原因と対策をご覧ください。
  • 噛み合わせの偏り:その歯にだけ強い力が集中していると、外れやすくなります。噛み合わせの調整で改善することがあります。
  • 残っている歯質が少ない:大きく削られた歯は、詰め物を保持する面積が小さく、外れやすい傾向があります。土台を作り直すなどの対応を検討します。
  • 内部で虫歯が進んでいる:下の歯質が虫歯で溶けると、接着面が失われて外れます。この場合は虫歯の治療が先に必要です。

繰り返し取れる場合、原因を解消しないまま付け直しても同じことが起こります。なぜ外れたのかを確かめることが、結果的に歯を長持ちさせることにつながります。

受診してからの治療の流れ

詰め物・被せ物が取れてご来院いただいた場合の、一般的な流れをご説明します。

1

問診・外れたものの確認

いつ、どのような状況で外れたのかをお伺いし、お持ちいただいたものの状態(変形・破損・内部の汚れ)を確認します。

2

歯の状態の検査

外れた原因を調べます。デジタルレントゲンやPanoSCOPE(パノラマX線AI解析)で、内部に虫歯が広がっていないか、歯の根に問題がないかを確認します。

3

再装着できるかの判断とご説明

そのまま付け直せるのか、作り直しが必要なのかをご説明します。判断の理由と、それぞれの選択肢について分かりやすくお伝えしたうえで進めます。

4

処置

再装着の場合は、内部を清掃してから接着します。虫歯があれば取り除いてから修復します。神経に達している場合は根管治療を行います。虫歯治療の流れと同様に、痛みへの配慮を大切にしています。

5

噛み合わせの調整と再発予防

処置後は噛み合わせを確認・調整します。歯ぎしりなど再脱離の原因が考えられる場合は、その対策もご提案します。

取れることを繰り返さないために

詰め物や被せ物には寿命があり、いつかは交換が必要になります。しかし、日々の習慣と定期的な確認で、その時期を先に延ばすことはできます。

  • 定期検診で早期に見つける:接着のゆるみや内部の虫歯は、外れる前の段階で見つけられることがあります。予防歯科での定期的な確認が有効です。
  • 境目を丁寧に清掃する:詰め物と歯の境目は、汚れが残りやすい場所です。歯のクリーニングで、ご自身では落としきれない汚れを取り除きます。
  • 歯ぎしりへの対策:就寝中の力が強い方には、歯を保護する装置をご提案する場合があります。装着に慣れるまで違和感を覚えることがあり、すべての方に適応するわけではありません。
  • 粘着性の強い食品に注意する:キャラメルやガムなどは、詰め物を引き剥がす力がかかります。

なお、外れた原因が虫歯である場合も少なくありません。虫歯がどの段階まで進むと修復物に影響するのかは、虫歯の進行段階(C0〜C4)の記事で図解しています。修復した歯は一般歯科で継続的に管理していくことが大切です。

よくあるご質問

詰め物・被せ物が取れた際に患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

歯の詰め物が少し取れたのですが、どうしたらいいですか?

A

一部だけが欠けて残っている場合も、残った部分の下で虫歯が進んでいることがあります。取れた部分を保管し、その歯で噛まないようにしたうえで、数日以内に歯科医院を受診してください。残っている部分を自分で剥がそうとすると歯を傷めるおそれがあるため、触らずにお越しください。

Q

歯の詰め物が取れた、捨ててもいいですか?

A

捨てずにお持ちください。変形や破損がなければ、清掃したうえでそのまま再装着できる場合があります。とくに金属製の詰め物や被せ物は再利用できる可能性が比較的高い素材です。再装着できるかどうかは、外れたものと歯の状態の両方を見て判断しますので、ご自身で使えないと判断される必要はありません。

Q

詰め物が取れたらすぐに歯医者に行くべきですか?

A

痛みがなくても、数日以内の受診をおすすめします。歯全体を覆う被せ物が取れた場合や、治療中の仮歯・仮詰めが外れた場合は、より早い受診が望まれます。強い痛みがある、歯ぐきが腫れている、土台がぐらついているといった場合は、できるだけ早くご連絡ください。

Q

詰め物が取れたまま何日くらい大丈夫ですか?

A

明確な期限があるわけではありませんが、数日〜1週間以内であれば清掃のうえ再装着で済むことが多くあります。1ヶ月ほど経つと露出面から虫歯が進んだり、隣の歯が動いて元の詰め物が合わなくなったりします。数ヶ月以上放置すると、根管治療や抜歯が必要になることもあります。早いほど治療は簡単です。

Q

取れた詰め物を自分で戻してもいいですか?

A

戻さないでください。詰め物の裏側には目に見えない汚れや細菌が付いており、そのまま戻すと細菌を歯の中に閉じ込めることになります。また、わずかにずれた状態で入ると噛み合わせが狂い、歯や顎に負担がかかります。市販の接着剤の使用も避けてください。歯や歯ぐきを傷めるうえ、固まった接着剤を除去するために本来不要だった歯の切削が必要になることがあります。

Q

治療してすぐにまた取れました。何が原因ですか?

A

就寝中の歯ぎしりや食いしばりで強い力が繰り返しかかっている、噛み合わせがその歯に集中している、残っている歯質が少なく保持する面積が小さい、内部で虫歯が進んで接着面が失われている、といった原因が考えられます。なお、治療途中の仮歯・仮詰めは、あとで外すことを前提に弱い力で付けてあるため取れやすくなっています。繰り返す場合は原因を確かめることが大切です。

Q

詰め物を飲み込んでしまったかもしれません。大丈夫でしょうか?

A

詰め物は小さく角が丸いものが多いため、飲み込んでも多くの場合は自然に排出されます。ただし、のどに違和感がある、むせる、息苦しさがあるといった症状があるときは、気道に入っている可能性も考えられますので、医療機関にご相談ください。いずれの場合も、歯そのものの処置は必要ですので歯科医院を受診してください。

詰め物・被せ物が取れてお困りではありませんか?

取れたままにしておくと、内部で虫歯が静かに進んでしまいます。
早めにご相談いただければ、そのまま付け直せることも少なくありません。
いなべ市・東員町周辺でお困りの方は、取れたものをお持ちのうえ、どうぞお気軽にご連絡ください。

まとめ:取れたものは捨てず、自分で戻さず、早めにご相談を

詰め物や被せ物が取れたときは、取れたものを捨てずに保管し、自分で戻したり接着剤で付けたりせず、その歯で噛まないようにしたうえで、数日以内に歯科医院へご連絡ください。この4点を守っていただければ、慌てる必要はありません。

とくにお伝えしたいのは、「痛くないから大丈夫」ではないということです。詰め物が取れた歯は、守られていた部分が露出した無防備な状態にあります。放置している間に虫歯が進むだけでなく、隣の歯や噛み合う歯が動いてしまい、取れたものがそのまま入らなくなることもあります。

数日以内であれば清掃して付け直すだけで済むことが多い一方、数ヶ月放置すると根の治療や抜歯が必要になることもあります。厚生労働省の調査でも、二次的な虫歯は歯を失う原因として重要な位置を占めています。早く動くほど、治療は簡単で歯へのダメージも小さくて済みます

また、繰り返し取れる場合は、歯ぎしりや噛み合わせといった背景が隠れていることがあります。ハギノ歯科では、付け直して終わりにするのではなく、なぜ外れたのかを確かめ、再発を防ぐところまで一緒に考えます。三重県いなべ市大安町で診療しておりますので、いなべ市やその周辺で詰め物・被せ物が取れてお困りの方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。

萩野 貴俊 副院長

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

愛知学院大学歯学部卒業。詰め物や被せ物が外れた際は、付け直せるかどうかの見極めと、その下で進んでいる虫歯の有無の確認を大切にしています。 なぜ外れてしまったのかという原因まで含めてご説明し、同じことを繰り返さない治療をご提案します。