親知らずが腫れた・痛いときの受診の目安|智歯周囲炎の見分け方と繰り返す理由(記事アイキャッチ)

親知らずが腫れた・痛いときの受診の目安|智歯周囲炎の見分け方と繰り返す理由

結論からお伝えすると、親知らずのまわりの歯茎が腫れて痛むときは、様子を見続けるよりも、早めに歯科へ相談していただくのが安心です。多くは「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼ばれる炎症で、お薬でいったん落ち着いても、原因が残っていると繰り返しやすいとされています。

とはいえ、「仕事や学校があって、すぐには行けない」「このまま引いてくれるなら我慢したい」「抜くことになるのが怖い」と迷われる方は少なくありません。この記事では、まず確認していただきたい受診の目安を3段階で整理し、そのあと、よく似た痛みとの見分け方や、歯科での対応をまとめました。

いなべ市のハギノ歯科でも、奥歯のあたりの腫れや痛みのご相談をお受けしています。痛み方や見た目だけで原因を決めることはできませんので、この記事は自己診断ではなく、相談するタイミングを決める手がかりとしてお使いください。なお、抜いたあとの腫れや痛みについては、親知らず抜歯後の過ごし方で解説しています。

まず確認|親知らずの腫れ・痛みは3段階で受診の目安が変わります

親知らずのまわりの炎症は、段階を追って強くなるとされています。いまの様子にいちばん近いものを、下の表で確かめてみてください。

いまの様子炎症の段階受診の目安
いちばん奥の歯茎が腫れて、触ると痛い。膿が出ることもある炎症のはじまり様子を見ずに、早めに歯科へ
腫れが広がってきた。ものを飲み込むのがつらい炎症が広がっているその日のうちに歯科へご連絡を
口が開きにくい。顔の腫れが外から見て分かる。熱やだるさがあるさらに広がっているただちに受診を。病院の口腔外科での治療が必要になることがあります

表の「いまの様子」と「炎症の段階」は、済生会の解説「智歯周囲炎」(2015年公開)が示す症状の進み方をもとにしています。「受診の目安」は、その内容に当院の考え方を加えて整理したものです。

同じ解説は、親知らずの歯茎が痛くなった時点で歯科へ行くよう勧めており、我慢しているうちに口が開かない・飲み込めない・顔が腫れてきたといった症状が出ると、大学病院や総合病院の口腔外科での治療が必要になると説明しています。

飲み込めない、口が開かない、顔の腫れが広がるといった症状があるときは、休診日や夜間であっても翌日まで待たず、休日・夜間に対応している医療機関にご相談ください。

症状が軽いうちの相談をおすすめしたい方

糖尿病のある方、ステロイド薬を長く服用している方、免疫力が低下している方は、重症化する傾向があるとされています。妊娠中も起こりやすいとされています(済生会)。当てはまる方は、症状が軽いうちにご相談ください。妊娠中の受診については、妊娠中の歯科受診の目安と注意点もあわせてご覧ください。

智歯周囲炎とは|親知らずのまわりの歯茎が腫れるしくみ

智歯周囲炎は、日本口腔外科学会の説明では、親知らず(智歯)が生えてくるときにみられる、歯の頭のまわりの炎症です。20歳前後の若い方に起こることの多い病気とされています(日本口腔外科学会「歯および歯周疾患」)。

親知らずは、永久歯の中でいちばん遅く、いちばん奥に生えてきます。生える場所が足りないことが多く、生えかけのまま、歯茎が歯の頭を部分的に覆った状態になりがちです。歯と歯茎のすき間に汚れがたまりやすく、歯ブラシも届きにくいため、歯茎に炎症が起こりやすくなります。

生えかけの親知らずのまわりが痛むときは、このかぶさった歯茎にばい菌が入って、炎症が起きていることがあります(日本口腔外科学会「『親知らず』について」)。

まっすぐ生えた奥歯と、半分だけ生えた親知らずに歯茎がかぶさって赤く腫れた状態を比べた、下あごの奥歯の断面イメージ図
下あごの奥歯を横から見たところ。左:まっすぐ生えそろい、歯茎が引き締まった状態。右:いちばん奥の歯が斜めに半分だけ生え、かぶさった歯茎が赤く腫れた状態。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。

こんな様子があれば、智歯周囲炎のことがあります

  • いちばん奥の歯茎が腫れている
  • 腫れた所を触ると痛い。膿(うみ)が出る
  • ものを飲み込むのがつらい
  • 口が開けにくくなってきた

これらは、済生会の解説が示す症状をもとに整理したものです。当てはまっても、智歯周囲炎と決まるわけではありません。次の章で、よく似た痛みとの違いを整理します。

疲れているとき・体調がすぐれないときに起こりやすい

智歯周囲炎は、体調の悪いときや、体の抵抗力が落ちているときに起こりやすいとされています。忙しい時期や大事な用事の前に限って腫れやすいのは、このためです(済生会)。「疲れのせいだから、休めば落ち着く」と考えがちですが、腫れが引いても、汚れがたまりやすい状態そのものは変わりません。

これは智歯周囲炎?よく似た痛み・腫れとの見分け方

奥歯のあたりの痛みや腫れには、智歯周囲炎のほかにも、いくつかの原因があります。様子ごとに、考えられることと、次に読んでいただきたい記事を整理しました。

痛み・腫れの様子考えられること次に読む記事・相談先
いちばん奥の歯茎が腫れて痛い智歯周囲炎この記事。歯科・歯科口腔外科へ
歯茎よりも、歯そのものが痛む親知らずや、その手前の歯のむし歯歯科へ
奥だけでなく、歯茎のあちこちが腫れる・血が出る歯周病など、歯茎全体の問題歯茎の腫れの見分け方
歯茎の腫れはないのに、あごの関節が痛む・口が開けにくい顎関節症など顎が痛い・口が開けにくいときの受診の目安
抜歯をしたあとに、腫れや痛みがある抜歯後の経過親知らず抜歯後の過ごし方

日本口腔外科学会は、親知らずが不完全に生えた状態のままになると、手入れがしにくく汚れがたまりやすいため、むし歯になって痛んだり腫れたりすることが多いこと、親知らずがむし歯になると手前の歯もむし歯になる可能性があることを説明しています(日本口腔外科学会「『親知らず』について」)。

見た目や痛み方だけで、どれに当たるかを見分けることはできません。いくつかが重なっていることもあります。迷ったときは、お口の中を直接確認できる歯科でご相談ください。

腫れが引いても、繰り返しやすい理由

炎症はいったん落ち着いても、原因が残ります

神奈川県歯科医師会の解説では、智歯周囲炎の炎症そのものは、抗菌薬の投与や消毒によって一時的にはおさまるとされています。ただし、原因となる歯がある限り、再発を繰り返すことになりがちとも説明されています(神奈川県歯科医師会「親知らずが腫れる原因は?」)。済生会の解説も、一度炎症を起こした親知らずは、繰り返し炎症を起こすことが多いとしています。

「前にも腫れたけれど、数日で引いた」という経験があると、次も様子を見たくなるものです。ただ、腫れが引いたことと、原因がなくなったことは別だと考えてください。

腫れが強い間は、抜歯をしないのが一般的です

「痛いので、すぐに抜いてほしい」と思われるかもしれません。しかし、炎症を起こしている間は抜歯ができず、腫れや痛みがおさまったあとに行うと説明されています(済生会)。神奈川県歯科医師会も、安全に抜歯できるタイミングは、強い炎症がおさまったときだとしています。

そのため、腫れているときの受診は「抜くかどうかを決める場」ではなく、まず炎症を落ち着かせるための受診です。「抜くのが怖いから」と、受診を先に延ばす必要はありません。

親知らずは、すべて抜くとは限りません

日本口腔外科学会は、親知らずだからといってすべて抜くとは限らないとし、正常に生えて機能している場合などは、一般に抜歯しなくてもよいと説明しています(日本口腔外科学会)。日本歯科医師会も、抜歯は気軽な行為ではなくリスクを伴うとしたうえで、生える方向が悪い場合や、炎症を繰り返している場合は、抜歯が適当と考えられるとしています(日本歯科医師会「親知らず」)。

抜いたほうがよい場合と、様子を見てよい場合の違いは、親知らずの抜歯が必要なケースで詳しく解説しています。

歯科ではどう対応する?ハギノ歯科に相談するとき

一般的な治療の考え方

日本口腔外科学会は、智歯周囲炎の治療について、抗菌薬(化膿止め)や消炎鎮痛薬(痛み止め)、うがい薬などで炎症を抑えたあと、かぶさった余分な歯茎を切除すること(歯肉弁切除)があり、生える位置に異常がある場合や、炎症を繰り返している場合は抜歯をすると説明しています(日本口腔外科学会「歯および歯周疾患」)。

済生会の解説では、軽症の場合は腫れている歯茎の洗浄と抗菌薬の服用で対応し、進んで顔が腫れてくると、飲み薬では足りずに点滴が必要になることもあるとされています。症状が軽いうちの受診をおすすめするのは、このためです。

ハギノ歯科に相談するとき

当院では、お口の中を拝見して、親知らずの生え方と、まわりの歯茎の状態を確認します。親知らずの抜歯も行っています。ただし、神経を傷つけるリスクが高い場合や、難しい抜歯になると判断した場合は、当院では処置をせず、高度医療機関をご紹介(紹介状を作成)することがあります。くわしくは、当院の口腔外科のご案内(親知らずの抜歯)をご覧ください。

受診のときに伝えていただきたいこと

  • いつから、どのあたりが腫れているか:今朝から・数日前から、右下の奥・左上の奥など
  • 口の開けにくさ・飲み込みにくさ・熱の有無:食事がとれているかどうかもお伝えください
  • これまでに同じ場所が腫れたことがあるか、服用中のお薬・持病・妊娠の有無

うまく説明できなくても大丈夫です。気づいたことを、そのままお伝えください。

受診までに気をつけたいこと

神奈川県歯科医師会は、強い症状があるときの心がけとして、お口の中を清潔にすること、あまり噛まなくてよいバランスのよい食事、十分な睡眠、処方された抗菌薬を指示どおりに飲むことを挙げています(神奈川県歯科医師会)。いずれも症状をやわらげるためのもので、原因を取り除くものではありません。

  • お口の中を清潔に保つ:食後はうがいをして、食べかすを残さないようにします。腫れている所は強くこすらないでください
  • あまり噛まなくてよい食事と、十分な睡眠をとる
  • 歯科で処方されたお薬は、指示どおりに飲む

避けていただきたいこと

  • 氷や保冷剤で冷やす:日本口腔外科学会は、むし歯や歯周病が原因であごや頬が腫れたときの説明のなかで、氷や保冷剤で冷やすことは治りを悪くするため避け、冷やす場合は水道水程度にとどめるよう呼びかけています(日本口腔外科学会「あごや頬がはれてきた」)。智歯周囲炎に限った説明ではありませんので、冷やし方に迷うときは受診の際にご相談ください
  • 以前にもらった抗菌薬や、ご家族のお薬を自己判断で飲む
  • 痛み止めで痛みをおさえたまま、受診を先に延ばす

強い症状があるときの目安は、はじめの表をあらためてご確認ください。

よくあるご質問

親知らずの腫れや痛みについて、患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

親知らずの腫れは、何日くらいで治りますか?

A

炎症の程度や体調によって変わるため、日数は一概にお伝えできません。神奈川県歯科医師会も、痛みや腫れがおさまるまでの日数は全身の状態などによって異なると説明しています(神奈川県歯科医師会)。腫れが引いても、原因となる歯が残っていると繰り返しやすいとされていますので、引くのを待つよりも、早めに歯科でご相談ください。

Q

腫れているうちに、すぐ抜いてもらえますか?

A

一般には、炎症が強い間は抜歯を行わず、まずお薬などで炎症を落ち着かせます。済生会の解説では、炎症を起こしている間の抜歯はできず、腫れや痛みがおさまったあとに抜歯するとされています(済生会「智歯周囲炎」)。抜歯をするかどうか、いつ行うかは、お口の中を拝見したうえでご相談します。

Q

腫れが引いたら、もう受診しなくて大丈夫ですか?

A

腫れが引いたあとも、一度ご相談いただくことをおすすめします。一度炎症を起こした親知らずは、繰り返し炎症を起こすことが多いとされています(済生会)。腫れや痛みが落ち着いている時期のほうが、今後どうするかを落ち着いて相談できます。

Q

一度腫れた親知らずは、抜くことになりますか?

A

すべてを抜くわけではありません。日本口腔外科学会は、生える位置に異常がある場合や、炎症を繰り返している場合は抜歯をすると説明しています(日本口腔外科学会「歯および歯周疾患」)。一方で、正常に生えて機能している場合などは、一般に抜歯しなくてもよいともされています(日本口腔外科学会「『親知らず』について」)。お口の状態によって判断が変わりますので、診察のうえでご相談ください。

Q

腫れたところは冷やしてもいいですか?

A

氷や保冷剤で冷やすことは、避けたほうがよいとされています。日本口腔外科学会は、むし歯や歯周病が原因であごや頬が腫れたときの説明のなかで、初期に熱っぽいようであれば冷やしてもよいが、氷や保冷剤は治りを悪くするため避け、水道水程度にとどめるよう呼びかけています(日本口腔外科学会「あごや頬がはれてきた」)。智歯周囲炎に限った説明ではありませんので、迷うときは受診の際にご相談ください。冷やしても原因はなくなりません。

Q

妊娠中に親知らずが腫れました。受診できますか?

A

受診していただけます。我慢せずにご相談ください。智歯周囲炎は妊娠中も起こりやすいとされています(済生会)。受診の際は、妊娠中であることと週数をお伝えください。お薬や処置は、お体の状態に合わせて判断します。妊娠中の受診については、妊娠中の歯科受診の目安と注意点もご覧ください。

いなべ市で親知らずの腫れや痛みにお困りの方へ。桑名市・東員町・四日市市など、近隣のみなさまからのご相談もお待ちしています。「腫れが引いてから行こう」と迷われているときこそ、まずはお気軽にご相談ください。

奥の歯茎が腫れて、お困りではありませんか?

お口の中を拝見して、親知らずの生え方と歯茎の状態を確認します。
腫れや痛みがあるときは、お電話またはWeb予約でお気軽にご相談ください。

まとめ:親知らずの腫れは「引くのを待つ」より早めの相談を

いちばん奥の歯茎が腫れて痛むときは、智歯周囲炎という炎症のことがあります。歯茎が歯の頭を覆ったままになり、汚れがたまりやすいことが背景にあります。

お薬でいったん落ち着いても、原因が残っていると繰り返しやすいとされています。腫れが広がる、飲み込みにくい、口が開きにくい、顔が腫れる、熱が出るといった変化があるときは、様子を見すぎずに受診してください。

腫れが強い間は抜歯をしないのが一般的ですので、腫れているときの受診は、まず炎症を落ち着かせるためのものです。この記事は自己診断のためのものではなく、診断は診察で行います。つらい症状を我慢せず、どうぞお気軽にお問い合わせください。

萩野 貴俊

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

いなべ市大安町で40年以上、地域の皆さまのお口の健康を見守ってまいりました。親知らずのまわりの腫れや痛みは、我慢せずにお気軽にご相談ください。