歯槽膿漏とは?初期症状と歯周病との違い

~「歯ぐきから血が出る」はサイン!歯槽膿漏を防ぐために知っておくべきこと~

はじめに

「最近、歯磨きすると血が出る…」「朝起きたときに口の中がねばつく」
そんな症状があっても、つい放置していませんか?

実はその段階こそ、歯槽膿漏(しそうのうろう)予備軍かもしれません。

「歯槽膿漏」と「歯周病」は同じ意味で使われることも多いですが、厳密には歯槽膿漏は歯周病の末期状態
つまり、「歯槽膿漏」は”放置の結果”として起こる重症段階のことを指します。

この記事では、歯槽膿漏と歯周病の違いを明確にしながら、

  • 症状の進行段階
  • 初期サインの見つけ方
  • 治療・予防の考え方

を、歯科医の視点からわかりやすく解説します。

歯周病とは?歯を支える組織の病気

歯周病は、歯の周りの組織(歯ぐき・歯根膜・歯槽骨)が炎症を起こす病気です。
歯と歯ぐきの境目にプラーク(歯垢)がたまることで、細菌が増殖。
それに対抗する免疫反応で炎症が起こり、やがて歯を支える骨まで破壊されてしまいます。

進行はゆっくりですが、痛みが少ないため気づかないうちに悪化するのが特徴です。

歯周病の進行ステップ

段階名称主な症状対応方法
歯肉炎歯ぐきの腫れ・出血・赤み歯磨き改善・歯石除去
軽度歯周炎歯ぐきが下がる・口臭プラーク除去・フッ素ケア
中等度歯周炎歯と歯の間が広がる・歯が動く深部清掃・スケーリング
重度歯周炎(歯槽膿漏)膿・強い口臭・歯の動揺・噛むと痛い外科処置・再生治療

つまり、歯槽膿漏は歯周病の最終段階
ここまで進むと、自然治癒は期待できません。

歯槽膿漏とは?膿が出る「重症の歯周炎」

「歯槽膿漏(しそうのうろう)」は、歯周病の中でも歯槽骨(しそうこつ)=歯を支える骨が溶けてしまった状態を指します。
病名としては古くから使われており、「膿(うみ)」が出るほど炎症が進行していることからこの名前がつきました。

症状は次のように進行します:

  • 歯ぐきの腫れが強くなる
  • 歯を押すと膿が出る
  • 口臭が強くなる
  • 歯がグラグラ動く
  • 噛むと痛い・力が入らない

最終的には、歯を支える骨が失われて歯が抜けてしまうこともあります。

歯槽膿漏と歯周病の違いを整理すると

比較項目歯周病歯槽膿漏
定義歯を支える組織全体の病気重度の歯周病(骨が溶け膿が出る段階)
主な原因プラーク(歯垢)・歯石・細菌感染歯周病の放置による進行
症状の重さ軽度~中等度まで幅広い重度・不可逆的
治療法歯石除去・プラークコントロール外科的治療・骨再生療法など
治癒の可能性初期なら回復可能完全回復は困難。進行停止を目指す

歯槽膿漏の原因:なぜ骨が溶けるのか

歯槽膿漏は、以下のような要因が重なって起こります。

  1. 歯垢・歯石の放置:細菌の塊である歯垢が硬化して歯石になり、炎症が進行。
  2. 喫煙:血流が悪化し、歯ぐきの抵抗力が低下します。
  3. 糖尿病:免疫力の低下により、歯周病菌が活発化。歯周病と糖尿病は”相互悪化”関係にあります。
  4. ストレス・不規則な生活:自律神経の乱れで免疫力が下がり、炎症が長引きます。
  5. 歯ぎしり・食いしばり:歯に過度な力が加わることで、骨の吸収が加速。

歯槽膿漏を放置するとどうなる?

放置すると、炎症は顎の骨(歯槽骨)にまで達します。
やがて歯がグラつき、最終的には自然に抜けてしまうことも。

さらに、歯周病菌は血管を通して全身に広がるため、

  • 心臓病
  • 糖尿病の悪化
  • 認知症リスクの上昇

など、全身の健康にも影響を与えます。

つまり、歯槽膿漏は”口の病気”にとどまらない全身疾患の入り口なのです。

早期発見のためのセルフチェック

次のチェック項目を週に1回、鏡を見ながら確認しましょう。

  • 歯磨きのたびに血が出る
  • 歯ぐきが赤い・腫れている
  • 歯と歯の間に食べ物がよく詰まる
  • 朝起きたとき口がねばつく
  • 口臭が気になる
  • 歯が少し動く気がする

1つでも当てはまれば、歯周病の可能性があります。
特に「膿」「動揺」「口臭」がそろう場合は、歯槽膿漏の危険信号です。

ハギノ歯科での治療の流れ

いなべ市のハギノ歯科では、歯周病・歯槽膿漏に対して以下のようなステップで治療を行っています。
(詳細はこちら 👉 歯周病治療ページ

1

検査と診断

歯周ポケットの深さ測定、レントゲン、出血・動揺の確認。

2

初期治療(歯石除去・スケーリング)

歯ぐきの上・下の歯石を丁寧に除去し、炎症を抑えます。

3

再評価

改善状況を確認し、深いポケットが残る場合は外科的治療へ。

4

再生治療・外科処置(必要に応じて)

骨を再生する「エムドゲイン法」などを検討。

5

メンテナンス

3〜4か月ごとの定期検診で、再発を防ぎます。

歯槽膿漏を防ぐためにできること

「歯が痛くなってから」ではなく、「痛くなる前に」通うのが、歯を守る最短ルートです。

  • 毎日の正しい歯磨き(歯間ブラシ・フロスを活用)
  • 定期的な歯科クリーニング
  • バランスの取れた食事(カルシウム・ビタミンC・タンパク質)
  • 禁煙・ストレス軽減
  • 定期検診での早期対応

よくあるご質問

歯槽膿漏・歯周病について患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

歯槽膿漏と歯周病、どちらが重い病気ですか?

A

歯槽膿漏は歯周病の進行形で、より重症です。歯を支える骨が溶け、膿が出る段階を指します。

Q

歯槽膿漏は自然に治りますか?

A

自然治癒はほぼありません。歯科医院での歯石除去や再生治療によって進行を止めることが目的になります。

Q

歯槽膿漏の治療期間はどのくらい?

A

軽度なら1〜2か月、重度で外科治療が必要な場合は数か月かかることもあります。状態により異なります。

Q

膿が出ている歯は抜くしかないですか?

A

すぐに抜歯とは限りません。炎症を抑え、骨再生治療で残せる場合もあります。

Q

歯槽膿漏は再発しますか?

A

再発しやすい病気です。治療後も定期的なメンテナンスを続けることが最も重要です。

まとめ:早期発見・早期治療が歯を守る鍵

歯槽膿漏は歯周病の最終段階であり、歯を支える骨が溶けて膿が出る重症の状態です。 一度失った骨を完全に回復させることは困難ですが、適切な治療により進行を止めることは可能です。

大切なのは、歯槽膿漏になる前の段階で気づき、対処すること。 「歯磨きで血が出る」「口臭が気になる」といった初期症状を見逃さず、早めに歯科医院を受診することが、あなたの歯を守る最善の方法です。

ハギノ歯科では、歯周病の各段階に応じた適切な治療をご提供しています。 定期検診による予防から、進行した歯槽膿漏の治療まで、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療計画をご提案いたします。

歯周病・歯槽膿漏は「沈黙の病気」と呼ばれるほど自覚症状が少ない病気です。 症状がなくても定期的な検診を受け、健康な歯と歯ぐきを維持していきましょう。

萩野 貴俊 副院長

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

愛知学院大学歯学部卒業。日本歯周病学会会員。 歯周病治療のスペシャリストとして、患者様の歯を一本でも多く残すための治療を心がけています。 早期発見・早期治療で、生涯ご自分の歯で食事を楽しんでいただけるようサポートいたします。

歯ぐきの腫れや出血が気になりませんか?

歯周病・歯槽膿漏は早期発見・早期治療が重要です。
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経験豊富なスタッフが、あなたの大切な歯を守るお手伝いをいたします。