大人の歯がグラグラするのは様子を見ていい?受診が必要なぐらつきの見分け方(記事アイキャッチ)

大人の歯がグラグラするのは様子を見ていい?受診が必要なぐらつきの見分け方

結論からお伝えすると、大人の歯は、乳歯のように「ぐらついて、抜けて、生え替わる」ことはありません。指で押して動くと分かる、舌で触ると動く。その時点で、歯を支えている土台に何かが起きているサインです。

原因でいちばん多いのは歯周病ですが、ぶつけた・強く食いしばった・根の先に炎症がある・根が割れている、といった別の原因でも同じように動きます。どれが原因かで「様子を見てよいか」「急いだほうがよいか」が変わるため、この記事では見分け方を先に整理します。

いなべ市のハギノ歯科でも「気のせいだと思って数か月経ってしまった」というご相談は少なくありません。歯のぐらつきは、我慢できてしまうぶん受診が遅れやすい症状です。

歯はどうやって支えられているのか

歯は骨に直接くっついているわけではありません。歯の根と、それを支える骨(歯槽骨)のあいだには、「歯根膜(しこんまく)」という薄いクッションが挟まっています。噛んだ力を受け止め、硬さを感じ取るセンサーの役割も果たしています。

このしくみのため、健康な歯にもごくわずかな「あそび」があります。ただし、それは指で押しても分からない程度です。押すと明らかに動く、噛むと動く、と自覚できる時点で、支えている骨や歯根膜に問題が起きていると考えます。

健康な歯の支えと、歯周病で骨が減ってぐらつく歯の断面イメージ図
左:健康な歯は根の大部分が骨で支えられている。右:歯周病で骨が減ると支えが短くなり、歯が動きやすくなる。※イラストはイメージ図です(実際の症例写真ではありません)。

支えが減る理由は、大きく2つ

ひとつは骨そのものが減ること(歯周病や、根の先の炎症で骨が溶ける)。もうひとつは歯根膜が傷んで一時的に緩むこと(ぶつけた、強い食いしばり)。前者のうち歯周病で減った骨は治療しても基本的に戻りませんが、根の先の炎症による骨の減りは根の治療で回復が期待できます。後者は原因を取り除けば落ち着くことがあります。「どちらのタイプか」を見分けることが、受診の判断そのものです。

様子を見てよいぐらつき、受診が必要なぐらつき

見分けるうえで手がかりになるのは、動く量・痛み・歯ぐきの状態・きっかけ・続く期間・本数の6つです。

確認する点様子を見てよい傾向受診をおすすめする傾向
動く量気のせいかどうか迷う程度指で押すと明らかに動く・舌で触って動くと分かる
痛み痛みはない噛むと痛い・何もしなくてもズキズキする
歯ぐきの状態変化はない腫れ・出血・膿・歯ぐきが下がって歯が長く見える
きっかけ強く食いしばった・硬いものを噛んだ直後で、日ごとに落ち着いてきている心当たりがない/ぶつけた・転んだ
続く期間数日で気にならなくなった1週間以上続く・だんだん動きが大きくなる
本数—複数の歯が動く

右側に1つでも当てはまるとき

その場で判断せず、一度確認を受けてください。とくに「明らかに動く」「歯ぐきの腫れや出血がある」「複数の歯が動く」が重なる場合は、歯周病で骨の支えが減っている可能性を考えます。

例外は「ぶつけた・転んだ」です。この場合は様子を見ずに、できるだけ当日〜翌日のうちに受診してください。早い段階で歯を固定できるかどうかで、その歯を残せる可能性が変わります。

逆に、強く食いしばった・硬いものを噛んだ心当たりがあり、痛みがなく、数日で落ち着いてきているのであれば、まずは硬いものを避けて経過をみて構いません。ただし1週間を超えて続く場合は、心当たりがあっても受診の対象です。

考えられる5つの原因

大人の歯がぐらつく原因を、頻度の高い順に整理しました。

1. 歯周病(もっとも多い)

歯ぐきの炎症が長く続き、歯を支える骨が少しずつ溶けて減っていく病気です。痛みが出にくいため、ぐらつきに気づいた時点では中等度以上に進んでいることが珍しくありません。歯みがきのときの出血、口臭、歯ぐきの腫れ、歯が長く見える、といった変化を伴いやすいのが特徴です。

厚生労働省 e-ヘルスネットも、歯周病は初期段階では自覚できる症状が出にくいとしたうえで、セルフチェック項目に「歯がグラグラする」を挙げ、当てはまる場合は歯科医療機関での検査をすすめています(厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」)。

ぐらつきに加えて出血や腫れがある場合は、当院の歯周病治療で、歯ぐきの検査とレントゲンで骨の状態を確認したうえで、進行を止めるための治療をご相談します。歯みがきのたびに血が出る方は歯茎からの出血と受診の目安、歯ぐきの腫れが気になる方は歯茎の腫れの見分け方もあわせてご覧ください。

2. ぶつけた・転んだ(外傷)

転倒やスポーツ、事故で歯に強い力がかかると、歯根膜が傷ついたり、歯が骨の中でずれたりして動きます。この原因だけは「様子を見る」が正解になりません。早い段階で隣の歯と連結して固定できれば、歯根膜が回復して落ち着くことが期待できます。時間が経つほど選択肢が減るため、当日〜翌日のうちにご連絡ください。

3. 食いしばり・歯ぎしり(咬合性外傷)

就寝中や集中しているときの強い力が歯根膜を圧迫し続けると、歯根膜が緩んで一時的に動くことがあります。朝起きたときにいちばん気になり、特定の歯だけが当たる感じがするのが特徴です。力の負担を減らせば落ち着くことが多い一方、歯周病がある歯に強い力がかかると進行を早めるため、両方が重なっている場合は注意が必要です。顎の痛みや口の開けにくさを伴う場合は顎関節症の記事もご参照ください。

4. 根の先の炎症(根尖性歯周炎)

虫歯が深く進んで神経が死んだ歯や、以前に神経の治療をした歯では、根の先に膿がたまって周囲の骨が溶けることがあります。特定の1本だけが動き、噛むと痛む、歯が浮いた感じがする、歯ぐきにニキビのような膨らみができるのが典型です。「浮いた感じ」が主な症状のときは歯が浮く感じの見分け方で詳しく解説しています。この場合は根の治療(一般歯科・虫歯治療)で炎症を取り除くと、動きが落ち着くことが多くあります。

5. 歯の根が割れている(歯根破折)

神経を取った歯や、被せ物が入っている歯に起こりやすい状態です。噛むと痛む、歯ぐきの腫れを繰り返す、動きが徐々に大きくなるといった経過をたどります。割れ方によっては残すことが難しく、状態を確認したうえでの判断になります。歯が欠けた・割れたときの対応はこちらの記事にまとめています。

なお、お子さまの乳歯のぐらつきは、生え替わりの過程で起こる正常な変化であることがほとんどです。この記事は大人の歯(永久歯)についての内容です。

ぐらついた歯は元に戻るのか

「一度ぐらついた歯は元に戻りますか」というご質問は、とても多くいただきます。答えは原因によって大きく違います。目安を整理しました。

原因見通しの目安
ぶつけた(早期に固定できた場合)歯根膜が回復し、数週間かけて落ち着くことが期待できる
食いしばり・歯ぎしり力の負担を減らせば落ち着くことが多い(就寝時のマウスピースなど)
根の先の炎症根の治療で炎症が引けば、動きが減ることが多い
歯周病(軽度〜中等度)減った骨は基本的に元に戻らない。治療の目標は進行を止めること。炎症が引くと動きが小さくなることはある
歯周病(重度)・根の割れ残すことが難しい場合がある。状態を確認したうえで判断

つまり、歯周病が原因のぐらつきは「治る」というより「これ以上減らさない」が現実的な目標になります。だからこそ、動きが小さいうちに気づいて止めることに意味があります。

自分で治そうとしないでください

「歯のぐらつき 市販薬」「自分で治す」と検索される方も多いのですが、市販薬で歯ぐきの腫れが一時的に軽くなることはあっても、減った骨が戻ることはありません。また、接着剤などで自分で固定するのは避けてください。歯ぐきを傷めるだけでなく、その後の治療の妨げになります。

ご自宅でできることは、動く歯で硬いものを噛まない、指や舌で揺らして確かめない、やさしく丁寧にみがくの3つです。「動くかどうか」を何度も確かめる行為そのものが、歯根膜への負担になります。

受診の目安を3段階で整理する

緊急度当てはまる状態
できるだけ早く受診ぶつけて動くようになった/噛むと強く痛む/歯ぐきが腫れて膿が出る/明らかに動き、日ごとに大きくなる/複数の歯が動く
数日以内に受診指で押すと動く(気がする程度〜明らかに動く)/1週間以上続いている/歯みがきで血が出る・口臭を伴う/歯が長く見えてきた
様子を見てよい強く食いしばった・硬いものを噛んだ心当たりがある/痛みがない/数日で落ち着いてきている

受診されるときにお伝えいただきたいこと

診断の助けになりますので、次の点を確認しておいでください。

  • いつからか:おおよその日数で構いません
  • きっかけ:ぶつけた・硬いものを噛んだ・心当たりがない、のどれか
  • どの歯か・何本か:だいたいの場所で構いません
  • 痛み・出血・腫れの有無:あれば、いつからかも

当院では、まず歯を器具で軽く動かして動きの程度を確認する検査(動揺度検査)と、歯ぐきの溝の深さを測る歯周ポケット検査を行い、レントゲンで骨の状態と根の先の炎症の有無を調べます。原因が力にあれば負担を減らす処置を、歯周病や根の炎症にあればそれぞれの治療をご提案します。いなべ市のほか、桑名市・東員町からもご来院いただいています。

よくあるご質問

歯のぐらつきについて、患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

一度ぐらついた歯は元に戻りますか?

A

原因によります。ぶつけた直後に固定できた場合や、食いしばり、根の先の炎症が原因の場合は、原因を取り除くと動きが落ち着くことが期待できます。一方、歯周病で減った骨は基本的に元に戻らないため、治療の目標は進行を止めることになります。炎症が引くと動きが小さくなることはあります。

Q

グラグラする歯は抜くしかないのですか?

A

ぐらついている=抜歯、ではありません。動きの程度、骨がどれだけ残っているか、原因が何かによって、残せる歯は多くあります。ただし重度の歯周病や根が割れている場合は、残すことが難しいこともあります。検査をしてから判断しますので、まずはご相談ください。

Q

自分で固定したり、市販薬で治したりできますか?

A

おすすめしません。接着剤などで固定すると歯ぐきを傷め、その後の治療の妨げになります。市販薬で歯ぐきの腫れが一時的に軽くなることはあっても、減った骨は戻りません。ご自宅では、動く歯で硬いものを噛まない、揺らして確かめない、やさしくみがく、の3つにとどめてください。

Q

ぶつけて歯がグラグラします。いつまでに受診すればよいですか?

A

できるだけ当日、遅くとも翌日のうちに受診してください。早い段階で隣の歯と固定できれば、歯根膜が回復して落ち着くことが期待できます。時間が経つほど選択肢が減ります。歯が完全に抜け落ちた場合は、歯を水で洗ったり乾かしたりせず、牛乳などに入れてできるだけ早く(可能なら1時間以内に)ご連絡ください。

Q

痛みはないのにグラグラします。放置してよいですか?

A

痛みがないことは安心材料になりません。歯周病は痛みが出にくく、ぐらつきに気づいた時点で中等度以上に進んでいることが珍しくありません。指で押して明らかに動く、1週間以上続く、歯みがきで血が出る、といった場合は、痛みがなくても受診をおすすめします。

Q

子どもの歯がグラグラしています。受診が必要ですか?

A

乳歯のぐらつきは、生え替わりの過程で起こる正常な変化であることがほとんどです。ただし、ぶつけた後に動く、痛みや腫れがある、永久歯(大人の歯)が動いている、なかなか抜けずに新しい歯が変な位置から生えてきた、といった場合はご相談ください。

いなべ市でお口のことにお困りの方へ。「気のせいかもしれない」という段階でご相談いただけると、残せる歯は増えます。

歯のぐらつきが気になっていませんか?

指で押すと動く、1週間以上続いている——そんなときは一度ご相談ください。
「心配ないと確かめる」ための受診も歓迎しております。

まとめ

大人の歯のぐらつきは、乳歯と違って自然に「抜けて生え替わる」ことはありません。指で押して動くと分かる時点で、歯を支える骨か歯根膜に問題が起きているサインです。

見分ける手がかりは、①明らかに動くか ②痛み・腫れ・出血を伴うか ③1週間以上続くか ④複数の歯か。これらに当てはまるときは、原因が歯周病である可能性を考えて受診してください。ぶつけた場合だけは、様子を見ずに当日〜翌日に。

歯周病で減った骨は基本的に戻りませんが、動きが小さいうちに気づけば、進行を止めて歯を残せる可能性は高くなります。「気のせいかもしれない」の段階が、いちばん選択肢の多い段階です。

萩野 貴俊

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

いなべ市大安町で約40年、地域の皆さまのお口の健康を見守ってまいりました。歯のぐらつきは「まだ噛める」うちは受診が後回しになりがちな症状です。動きが小さいうちにお越しいただければ、できることはずっと多くなります。