歯槽膿漏と全身疾患の関係:口の炎症が全身に及ぼす影響

「歯ぐきの病気と体の病気って関係あるの?」
実は近年、歯槽膿漏(重度歯周病)と全身疾患の関係が次々と明らかになっています。

歯槽膿漏の原因は細菌感染と慢性炎症。 この炎症が血液を通じて全身に広がることで、糖尿病、心臓病、脳梗塞、認知症など、 命や生活の質に関わる病気を悪化させることが分かっています。

本記事では、「歯槽膿漏がなぜ全身に影響するのか」「どんな病気と関連しているのか」を、 医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。

歯槽膿漏が全身に影響するメカニズム

歯ぐきに炎症が起きると、歯周ポケットの中で細菌が増殖します。 これらの歯周病菌が血流に乗って全身をめぐることで、 体の各所に炎症反応を引き起こします。

さらに、歯周組織で作られる炎症性物質(サイトカイン:IL-6やTNF-αなど)が 血液を通じて全身に放出されるため、慢性的な炎症状態を全身に波及させてしまうのです。

これが「口腔から全身への炎症伝播」と呼ばれる仕組みです。

歯周病菌が体内に侵入するルート

1

歯ぐきの毛細血管から侵入

歯槽膿漏により、歯ぐきの粘膜バリアが壊れる

2

炎症による血管透過性の亢進

細菌や毒素(LPS:リポ多糖)が血中に入りやすくなる

3

全身を循環し、遠隔臓器で炎症を起こす

このルートが長期間続くことで、全身疾患の発症や悪化に関与

糖尿病と歯槽膿漏の関係:互いに悪化させる「悪循環」

糖尿病と歯槽膿漏の関係は非常に深く、 「歯周病は糖尿病の第6の合併症」と呼ばれています。

歯槽膿漏が糖尿病を悪化させる理由

歯周病の炎症で作られるサイトカインが、インスリンの働きを邪魔します。 その結果、血糖値が上がりやすくなり、糖尿病のコントロールが難しくなります。

さらに、口内の細菌が血管に侵入することで、 体が「常に軽い感染状態」となり、インスリン抵抗性を高めてしまうのです。

糖尿病が歯槽膿漏を悪化させる理由

糖尿病の人は血流が悪くなり、歯ぐきへの酸素・栄養供給が減少します。 これにより免疫機能が低下し、細菌への抵抗力が落ちるため、 炎症が長引きやすく、治りにくくなります。

悪循環のサイクル

歯周病の炎症 サイトカイン 増加 血糖上昇 免疫力 低下

実際、歯周病を治療するとHbA1c(血糖値の指標)が0.3〜0.6%改善することが 研究で示されています。つまり、「歯を治すことは血糖値を下げること」にもつながるのです。

心臓病・脳梗塞との関係

歯周病菌は血管の内側で炎症を起こす

血液中に入った歯周病菌やその毒素が、 動脈の内壁に炎症を起こし、動脈硬化の引き金になります。

これが進行すると、

  • 狭心症・心筋梗塞(冠動脈の閉塞)
  • 脳梗塞(脳血管の閉塞)

などの重大疾患を招くことがあります。

研究データ

  • 歯周病がある人は、ない人に比べて心臓病の発症率が約2倍
  • 血管内から歯周病菌が検出されるケースも報告あり

つまり、歯槽膿漏の治療は「心血管疾患の予防」でもあるのです。

認知症との関係:脳にも影響を与える歯周病菌

歯周病菌が脳に届く?

アルツハイマー型認知症の患者の脳から、 歯周病菌(P.g.菌)やその毒素(ジンジパイン)が検出されたという報告があります。

この菌が脳内に入り込むことで、 神経細胞を傷つけ、アミロイドβ(認知症の原因物質)を増加させることがわかっています。

歯の喪失も認知機能に影響

咀嚼機能(噛む力)が低下すると、脳への血流が減少し、 記憶や判断力の低下につながることも研究で確認されています。

つまり、「歯を残す」ことは「脳を守る」ことでもあるのです。

妊娠中の歯槽膿漏と早産リスク

妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすくなり、 歯周病が悪化しやすい時期です。

歯槽膿漏の炎症物質が血液を通して子宮に届くと、 子宮の収縮を早め、早産や低体重児出産のリスクが高まることが知られています。

妊娠中も安全に受けられる歯科検診・クリーニングを受けることが大切です。

歯槽膿漏と全身疾患の関係まとめ

全身疾患影響の仕組み主なリスク
糖尿病炎症性サイトカインが血糖コントロールを悪化相互に悪化
心臓病・脳梗塞血管内の炎症・動脈硬化促進発症リスク2倍
認知症菌や毒素が脳に到達・神経障害認知機能低下
妊娠・出産炎症物質が子宮に影響早産リスク上昇

ハギノ歯科での全身連携アプローチ

いなべ市のハギノ歯科では、歯槽膿漏治療の際に、 糖尿病や心臓疾患をお持ちの方にも安心して受けていただけるよう、 内科的背景を考慮した治療計画を立てています。

  • 血糖値・服薬状況のヒアリング
  • 低侵襲治療(痛み・出血を抑えた処置)
  • 全身疾患を意識した予防プランの提案

詳細はこちら:歯周病治療ページ

歯槽膿漏を防ぎ、全身を守るためにできること

  1. 定期的な歯科検診(3〜4か月に一度)
  2. 歯間ブラシ・フロスによる歯垢除去
  3. 禁煙・バランスのとれた食生活
  4. 糖尿病・高血圧などの基礎疾患をコントロール
  5. ストレス・睡眠不足の改善で免疫力を維持

よくあるご質問

歯槽膿漏と全身疾患について、患者様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します

Q

歯槽膿漏を治すと糖尿病も良くなるのですか?

A

はい。歯周病治療によって血糖値(HbA1c)が平均0.3〜0.6%改善するという報告があります。

Q

心臓病で血液サラサラの薬を飲んでいますが、歯周治療は受けられますか?

A

可能です。ハギノ歯科では服薬内容を確認し、出血を抑える安全な治療を行います。

Q

認知症予防に歯周ケアは本当に効果がありますか?

A

直接的に治すわけではありませんが、歯を保つことで脳の血流と神経刺激を維持できるため、予防効果が期待されています。

Q

妊娠中に歯科治療を受けても大丈夫?

A

妊娠中期(安定期)であれば問題ありません。予防目的のクリーニングはむしろ推奨されます。

Q

歯槽膿漏を放置するとどんな全身リスクがありますか?

A

糖尿病・心臓病・脳梗塞・認知症・早産など、慢性炎症が全身に波及するリスクがあります。

まとめ:歯槽膿漏の治療は全身の健康を守ること

歯槽膿漏は単なる「口の中の病気」ではありません。 歯周病菌や炎症物質が血液を通じて全身に広がることで、 糖尿病、心臓病、認知症、早産など、様々な全身疾患のリスクを高めます。

特に糖尿病とは相互に悪化させ合う関係にあり、 歯周病の治療が血糖値の改善につながることも明らかになっています。 また、心臓病のリスクは約2倍、認知症の原因物質も増加させるなど、 その影響は想像以上に広範囲に及びます。

しかし、適切な歯周病治療と定期的なメンテナンスによって、 これらのリスクを大幅に減らすことができます。 お口の健康を守ることは、全身の健康を守ることと同じです。

ハギノ歯科では、患者様の全身状態も考慮した安全な歯周病治療を行っています。 歯ぐきの症状が気になる方、基礎疾患をお持ちの方も、安心してご相談ください。

萩野 貴俊 副院長

この記事の監修者

ハギノ歯科 副院長
萩野 貴俊

愛知学院大学歯学部卒業。日本歯周病学会会員。 歯周病と全身疾患の関係について、最新の知見を基に患者様にわかりやすく説明しています。 お口から全身の健康を守るお手伝いをいたします。

歯槽膿漏が全身に影響する前に、早めの対策を

ハギノ歯科では、患者様の全身状態も考慮した歯周病治療を行っています。
糖尿病や心臓病などの基礎疾患をお持ちの方も、安心してご相談ください。
お口の健康から、全身の健康を一緒に守りましょう。